being&doing

断裁士は暑い日も寒い日も一日中基本的には立ち仕事です。普段詳しく知ることのなかった断裁について、(事務職の女子社員に至るまで)全社員が初めて学ぶということに意味がありました。

断裁担当者の発表にはプロ意識の高さと気概が溢れていました。それはまた断裁品に込める当社の精神性であり熱い思いです。

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≪断裁機の刃物と日常の仕事について≫

断裁機の刃物の材質には超硬合金(非常に硬い合金)とハイスピードスチール(high-speed steel:高速度鋼)、略してハイスの2種類があります。超硬合金に比べ、ハイスは摩耗性に於いてやや劣っています。私はハイスを使っておりますので、ハイスを中心にお話させて頂きます。

当然のことながら、刃物は使用しているうちに切れ味が悪くなり交換する必要が出てきます。一日に刃物を降ろす回数は仕事量により変わってきますが、平均して約400回ほどです。

そして1500~1600回、すなわち4日に一度の頻度で刃物を交換いたします。これはあくまでも目安であり、その時の刃物の状態、切れ具合、また音などから判断して3~5日の範囲で判断します。1回刃物を交換するには25~30分ほど時間がかかります。

新しい刃物に変えてから断裁する商品の順序としましては、まず上質・コート系、そして徐々に厚物としてゆくのが理想的なのですが、何しろどのような紙を断裁するのか予定が立ちませんので、新しい刃物でいきなりボール等の厚物を断裁する場合もあります。また、上質ばかりが続いても案外早く切れ味が悪くなることもあります。

刃物の切れ味が悪くなってきますと、刃を下ろした時の音が(新しい時の軽やかな音ではなく)鈍く重たい音に変化し、最悪の場合には切り口がひっついてしまうことがあります。その際は、手で切り口をほぐしてバラバラにしなければなりません。我々はこのことを「紙をさばく」と申しますが、これにより商品を少しでも良好な状態にもってゆく作業が必要となります。

何故そこまで切れなくなった刃物を使い続けるのかというご指摘があるかと思いますが、このあとの仕事の流れ、例えば翌日の朝一番にチップボール等の厚物を断裁する予定のある場合には、今ここでは刃物を交換できないのです。そのような時は、(表現はおかしいかもしれませんが)そのまま目をつぶって進めてしまうということもあります。

しかし、一にも二にもお得意先にはより仕上がりの良い商品を提供するのが我々の使命だと常々思っておりますので、そこのところの葛藤で思い悩むことが多々ありますが、その葛藤を繰り返しながら最も賢明な判断を下し断裁順序を決定しています。

自分自身が思い描いた通りの流れで一日の仕事を終えた時の充足感は、何ものにも代え難いものがあります。このような事を考え、ミスを起こさぬよう注意を払いつつ日々仕事に携わっております。

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